準備作業
同人誌の制作といっても、まったくの手作りから、商業出版に近いものまでありますが、今回は印刷物としての同人誌にフォーカスして説明します。
「卵が先か、鶏が先か」ではありませんが、アウトプットが印刷物ですから、あらかじめ、発注先の印刷会社の能力や機能を理解するに越したことはありません。原稿づくりに熱中して、いざ発注段階で、頭を抱えないように準備しましょう。
完全原稿での入稿
最初に確認したいのは、原稿の入稿方法です。基本、原稿は完全原稿であれば、イメージ通りの作品に仕上げることができます。
そのためにはデジタル化したデータが必要です。小説などの文字物であれば、Wordでも入稿可能なところもありますが、マンガなどの場合、マンガ制作専用のCLIP STUDIOや、Comic Studioといったソフトが必要になります。
入稿に際しては、オンライン入稿が基本になりますので、まずは、ご自分のネットワーク環境やデジタル制作環境が、印刷会社とマッチングしているかを確認してください。
デジタルデータの受け入れフォーマットに関しては、それぞれの業者によって微妙に違いますが、PDFでの入稿は、仕上がりがイメージしやすく、多くの印刷会社で採用されています。
もちろん、フルサポートをしてくれる印刷会社もありますが、費用面、スケジュール面に影響してきますので、あくまでも、完全原稿に近づけることが得策です。
予約申し込みと原稿制作
印刷会社が決まったら、早速原稿づくりに入ります。まずは、冊子のサイズを決めましょう。業者のサイトなどを閲覧して、印刷可能なサイズを選びます。
小説などの文字物の場合は、A5、B5などのサイズが最適です。基本は縦書きが読みやすく、一般的です。マンガの場合は、週刊誌サイズのB5や、少し大きめのA4が主流です。
次に、大まかなページ数を設定しましょう。冊子のページ数は基本的には4や8の倍数が基本です。印刷は一般的に、大きな紙に複数のページを割り当て、印刷したものを断裁して製本します。ただ、コミケに出品されるマンガ誌は、コピーのように、表裏印刷したものを束ねる「ぺら丁合」を利用することも多いようです。
原稿づくりには、印刷再現や印刷方式による制限や、ルールがありますので、テンプレートや、解説記事を参考にして原稿づくりを進めてください。本文の紙は上質紙が基本ですが、写真や画像のあるものは、コート紙やアート紙などを利用することもあります。
表紙は、本文と同じ紙を使うこともありますが、コート紙やアート紙を利用して、色鮮やかに装丁することで、インパクトのある訴求を実現することができます。
ブースでは平積みされるので、それを前提にしたデザインを心がけてください。表紙だけ複数の色彩表現でアイキャッチを表現することもできます。
印刷方式は一般の印刷物に利用されるオフセット印刷が主流ですが、少部数の場合はオンデマンドのデジタル印刷機が利用されます。仕様に関しては、各社のホームページなどを参考にしてください。
仕様が決まったら、発注に先立って、印刷会社に予約を入れましょう。コミケなどの時期は、利用者が集中しますので、スケジュールに余裕を持たないと、対応してくれません。また、業者によっては、事前予約ができないところもあるので、注意してください。
納入方法
完成した印刷物は基本的に宅配便での納入が原則ですが、コミケ対応の業者の場合、自社便で直接会場に持ち込むサービスを提供していることもあります。
コミケ関連のイベントでは、会場の関係から、納品の日程や、時間がきめ細かく規定されています。宅配便を利用する場合は注意が必要です。冊子は、部数がまとまると、想像以上の重さになります。会場への搬入については、準備をしっかりすることが大切です。
配送料も業者によって異なりますので、比較検討しましょう。その他に小説や、研究書などは、自費出版として商業出版ルートを通じて、本屋で販売するといったサービスも提供されています。
作品の販売
同人誌の販売として利用されるのが、コミケに代表される頒布会です。頒布会の概要などはホームページなどで閲覧可能です。また、日本全国の頒布会のスケジュールなどを告知するサイトなどを参考にしてください。
頒布会は、ファン同士のコミュニケーションとマンガを通した表現の「場」です。作品を一人でも多くの人に理解してもらうために、プロモーション活動も活発です。単に作品を置くだけでなく、その中身を理解してもらうために、様々なツールが利用されます。
コスプレや、着ぐるみなどで集客し、ポスターやプレミアムグッズの販売など、多面的なプロモーションを展開します。場に埋没するのではなく、場を盛り上げ、ブースのアイデンティティーを明確にしていきましょう。
コミケなどの頒布会での販売に加えて、出版ルートやアマゾンなどの通販を活用した委託販売などの方法もありますが、それぞれ、決め事やルールがありますので、関係者に確認をとってください。