同人誌における表現規制について
同人誌は、基本的に個人ベースであることで、「何でもあり」という誤解をしている人がいますが、世に出す以上、社会通念や法的な制約にカバーされます。
この分野では、これまでにも数多くの事例がありますので、参考にしながら、良い作品を作りに活かしましょう。
同人誌は、基本的に個人ベースであることで、「何でもあり」という誤解をしている人がいますが、世に出す以上、社会通念や法的な制約にカバーされます。
この分野では、これまでにも数多くの事例がありますので、参考にしながら、良い作品を作りに活かしましょう。
1992年に、無修正の同人誌が、警察に拾得物として届けられたことから、幕張メッセでのコミケの開催が断られ、代替施設となった晴海・東京国際展示場サイドから、出品作品の内容確認や、同人印刷所への協力要請などがなされました。
94年には、千葉県がページ全体の20%以上、または20ページ以上に性表現を含むものを、自動的に「有害図書」とする条例を制定しています。
このような同人誌の冬の時代を経験した業界では、業界、あるいは企業の自主ルールを定め、業界としての成長阻害要因を断ち、健全な発展に向けて活動を進めています。その基本は社会通念上の規制、著作権・肖像権、そして性表現に関するものが中心です。
まずは、当たり前の話ですが、法律違反や条例違反になるものは、全て不可になりますが、加えて、反社会的、危険性のあるもの、実在する個人や団体への誹謗・中傷、企業や団体のロゴマークや、キャラクターの無断使用、未成年者の成人向け作品の執筆や発行、発注など、社会通念上、不適切なものを規制しています。
著作権、肖像権の侵害も重要な要素です。一例で言えば、2020年オリンピックが開催されますが、そのマークの使用は大変厳しい使用条件が決められており、安易に使うことはできません。
印刷会社の責任が問われる場合がありますので、キャラクターやロゴマーク等の使用に関しては、シビアに管理しています。
コミックで良く発生するのが性表現の問題です。海外に比べて日本は寛大であるというのが識者の意見ですが、同人誌の場合、かなり際どいものがあるのも事実です。
このため、イベントの主催者や、印刷会社は問題がある場合には、「成人マーク」や「18禁マーク」の表記を義務付け、問題が発生しないように、修正処理を依頼し、万全を期しています。また、責任の所在を明らかにするために、奥付に発行者名や印刷会社名の明記を依頼しています。
日本同人印刷業組合では、刑法175条「わいせつ図画」の印刷請負をしないことと、「成人向け」図書の明示、奥付の明示による責任の明確化を進めています。
また、パロディーについても様々な意見があり、まだ定まった方向性は確定していませんが、日本のパロディーは風刺というよりは、原作への愛着や敬意を表した表現との受け取り方もあり、論争が続いています。
佐藤秀峰氏の「ブラックジャックによろしく」は、著作権は放棄していないものの、商用、非商用を問わず、2次利用を許可しており、電子書籍の立ち上がり時に大きな影響をおよぼしています。
著作権などの知的財産権については、デジタル化でその流通・配布が容易になったことから、強化すべきという意見が強くなっています。米国が抜けて、膠着状態にあるTPPでも、著作権強化や、著作権を非親告罪にしようという動きが伝えられています。
法律は、時代や技術の変化とともに変化していきますので、状況を把握し、明確な手を打っていくことが大切です。
コミケなどの同人誌の世界は、海外からも不思議がられていますが、ある意味、自由が黙認されて発展してきました。しかし、1万部を超える販売をなしとげている実態や、海外との違法性認識のズレもあり、今後の展開はよりシビアになっていくものと思われます。