レビューサイトに出てこない“陸の孤島”。見つけてもらうためには?
「自分たちが常連になりたい店を、つくっちゃえ!」
それが、「手づかみdining 東京ハンズ」の始まりです。私も妻も外食が大好きでしたが、子ども連れで遠慮なく楽しめる店は近所に少ない。それならばと、飲食業界に20年以上携わった自分たちの経験を活かしてビストロをオープンしたのが、2015年9月のことでした。
家賃や坪数、自宅からの近さなどの条件を満たしたのが、今の場所です。まずは飲食店のレビューサイトに登録したのですが、普通に駅名を入れて検索しても、うちの店名が出てこない。検索の基本設定が、「駅から800m」などのエリアになっているためです。目黒駅、中目黒駅、どちらからも1km以上離れているこの店は、ネット上でも“陸の孤島”でした。
SNSも始めていましたが、当時はあまり使いこなせていませんでした。「これじゃあ、誰にも見つけてもらえないな」と思い、チラシの印刷やポスティングなどを試すことにしました。
駅近でなくても周知されて、安定の“常連さん”を増やせる!
ラクスルを初めて利用したのは、店をオープンして2年くらいたった2017年10月です。最初はポスティング、1か月後に新聞折込も注文してみました。その結果、エリアを細かく選びやすいポスティングがうちには向いていると判断して、続けてみることにしました。
初めは配布エリアを少し広めに設定していたのですが、駅周辺の人は商店街を通ってわざわざこちらまで来ないことなどがわかってきて、店から1km以内を選択するようになりました。少しずつお客さまが増え始め、「お店として安定してきたな」と思えたのは翌年からです。店をオープンして、3年目くらいですね。
そのときは、「よし、これはくる!今こそ一気にお客さまを呼ぼう」と決めて、ポスティングの頻度を年に7、8回と、かなり増やしています。何度か来てくださった方にはアンケートで住所を書いていただき、DMも送るように。そこからさらに、常連の方が増えていきました。
テレビや雑誌にも取り上げられるようになりましたが、そのときは遠くから来る新規のお客さまが増えました。でも、二度、三度と来てくれるのは、やはりご近所の方ですね。今は、9割が近隣のお客さまです。
数字で見えない成果が高い。しばらく来ていないお客さまの呼び戻しにも!
コロナ禍では営業できない時期もあり、悔しい思いをしました。ポスティングもストップしていましたが、2022年から再開しています。今は、9割くらいのお客さまが戻ってきてくれました。ポスティングは、常連の方の呼び戻しにも有効だと思います。「チラシ、見たよ」といって来店される方は多いんですよ。やっぱり、思い出してもらえるんですよね。
ただ、効果の測定となると難しいです。チラシに値引きクーポンを付けているんですが、持ってくる方がほとんどいないんですよ。それだけで見ると、実は0.5%にも届かないくらいです。一般的には有効期限前になると急いで使う人がいるので反響が大きいといいますが、そういうこともないですね。
ポスティングは配布直後に一番効果が上がるともいわれますが、それも当てはまりません。ラクスルから配布が完了したお知らせが届いても、お客さまが一向に増えない。どうしたのかと、最初は不安でいっぱいになりました(笑)。来客数が増えたのは、1週間を過ぎた頃から。今では、この地域の皆さんはそういうペースなのだと理解しています。
なので、正確な効果測定はできないのですが、配布してから来店者数が増えることは確実です。数字では見えない効果が、きちんと表れているということだと思います。
店の雰囲気がわかる賑やかなデザインに!写真はプロに依頼
チラシのデザインは、私がPhotoshopでつくっています。ガチャガチャと賑やかに、気取りのない雰囲気にするのがこだわりです。店名に「手づかみ」と入れていますが、マナーなんてないよという意味で、本当は手づかみすらどうでもいい。箸を使ってもいいし、ナイフとフォークで食べてもいいんです。
表面に看板メニューの「丸鶏のロースト」やワインの写真を入れる構成は、あまり変えないように意識しています。ガラリと変えてしてしまうと、常連さんに気づいてもらいにくくなるかも知れないので。裏面はメニュー名と価格を入れるなど、少し変更することはありますね。
メインのキャッチコピーだけは、ほぼ毎回変えています。「目黒3丁目、中目黒4丁目にお住まいのあなた」というふうにポスティングをしている地名を入れてみたり、「子連れの方、来てね」と呼び掛けたり、いろいろと試しています。
写真は、プロの撮影です。自分が撮った写真では食べたいとは思えないので(笑)、最初から絶対にプロカメラマンに依頼すると決めていました。料理関係に強いカメラマンに年に一度、まとめて撮影してもらい、チラシやSNSに使っています。
手間と時間が短縮できて、やりたいことにすぐたどり着ける!
今はラクスルでずっとポスティングをしていますが、最初の頃は他社のサービスもいろいろと利用しました。最終的にラクスルを選んでリピートしている理由は、ひとことで言うと「一番ラク」だったからです。
印刷業者で印刷して、ポスティング業者に依頼するというのもしたことがあるんですが、これは大変な手間だなと。ラクスルなら、すべて一度にできます。費用は一番安かったわけではないんですけど、手間と時間をギュっと短縮できたバランスを考えると、やっぱりラクスルだなと思いました。
あとは、操作のしやすさです。サイトに入って、やりたいことにすぐたどり着けるというのがいいですね。入稿のとき、「文字がはみ出ています」などとチェックしてくれるのもありがたいです。初めてのときは多少迷ったかも知れませんが、感覚的でわかりやすいと思います。今ではすっかり慣れて、本当に助かっています。
今後も、仕様や部数を調整しながら利用していきたいですね。実は、サイズをB4にしているのは、“戦略”なんです。通常はA4かA3が多いので、ポストのなかでちょっとはみ出て、目に入りやすくなります。A4やA3にしたこともあるのですが、一番反響が大きいのがこのサイズでした。これからも、いろいろと試してみたいと思っています。
1回でも反応はある!飲食店なら必要経費と考えて欲しい
私は個人のお店なので駅前に出せるはずもなく、その分、家賃の安いところでオープンしています。それならば、ポスティングも含めて広告は絶対に必要な経費だと思うし、同じような個人のお店なら、そういうふうに考えて欲しいです。駅から遠いところなら、そうしないとお客さまは来ませんから。私も、売り上げに対する広告費のパーセンテージは決めています。
広告費を使っても問題のない価格設定にしておくことも大事です。宣伝で赤字になってしまったら意味がないし、続けていけないので。メニューの価格に、広告費を入れてはいけないということはないと思います。
ポスティングはすぐに効果があると思われがちですが、当店のようにそうではないこともあります。気になるチラシを取っておく方もいるし、気にならなくても目にはしていますから、だんだんと効果が出てくるものです。1回でも、反響がゼロということはありません。だから、やるべきだと思うんですよね。そうでないと、何も始まらないので。
私もメインターゲットであるご家族の皆さんに、「外食を楽しもうぜ!」という「手づかみdining 東京ハンズ」のコンセプトをしっかりと伝えていきたいと思います。