印刷におけるスクリーン線数を解説!使用例と使い分けのための条件
印刷物は、元になる版のしくみや条件によって仕上がりのクオリティが大きく変わります。オフセット印刷やインクジェットプリンターでの印刷などで「条件」にあたるのがスクリーン線数です。この記事は、印刷におけるスクリーン線数と使い分けの例について解説します。
印刷物は、元になる版のしくみや条件によって仕上がりのクオリティが大きく変わります。オフセット印刷やインクジェットプリンターでの印刷などで「条件」にあたるのがスクリーン線数です。この記事は、印刷におけるスクリーン線数と使い分けの例について解説します。
目次
冊子やカタログなどを作るときに用いられる「線数」は、印刷の「細かさ」を示しています。なんとなくイメージでとらえている方もいますが、正確に用いるならばもともとの意図をきちんと知ることが大切です。
ここでは、印刷において「線数」が用いられる理由と、本来の意味、似た用語である解像度との違いについて解説します。
線数という用語は、印刷方式の一種であるスクリーン印刷において、印刷の「精度」を表す尺度の1つです。通常、印刷というと版画のように凹凸がある板にインクをつけて素材に転写するイメージが一般的でしょう。
ところがスクリーン印刷では、あらかじめ版に空いた穴をインクが通って素材に転写されます。従来の凹凸を用いない方法であるため「孔版印刷」と呼ばれ、これまでは版に「絹のスクリーン」、いわゆる「糸を編んだ布」を使っていました。
現在は絹ではなく、スクリーンにナイロンやポリエステルなどの化学繊維、あるいはステンレスの金属繊維が用いられています。とはいえ、素材は変わってもスクリーンを構成しているのはやはり布であり糸です。スクリーン印刷に使う版は、糸でできているのは間違いありません。
スクリーン線数は、用いる版の印刷の細かさを示します。このしくみを理解するには、スクリーン印刷の版がどのように作られるかを知らなければなりません。
スクリーン印刷では、スクリーンの上に「着色部分」のポジフィルムをのせて乳剤を塗り、紫外線をあてて版を作ります。着色部分の乳剤は紫外線があたらないため硬化せずに水で流され、そのほかの乳剤が硬化した部分がスクリーンに版として残るしくみです。
ところがスクリーンは元々「糸を編んだ」布であるため、空ける穴の大きさや数もその網目の細かさで決まります。網目が細かいほどよりきめ細やかな印刷ができる、つまりスクリーンの糸が多いほど印刷の精度が上がるということです。
ここでいうスクリーンの糸の数がスクリーンのきめの細かさであり、「スクリーン線数」とは印刷の細かさといえます。
スクリーン線数と似たような意味で用いられるのが、デジタルカメラなどに使われる「解像度」です。解像度とは、ビットマップ画像における画素(画像を構成する小さな「点」)の密度をいいます。同じ大きさの画像であれば画素数が多い、つまり解像度が高いほどきめ細やかな画像となるのはお分かりでしょう。
一方のスクリーン線数は一般的に4種のカラーに分けて版が作られますが、もともとのカラーを再現するには版の角度も変える必要があります。
このような要素を考慮すると、カラーの再現性に必要な解像度は、スクリーン線数の2倍が一般的であるとされています。例えばスクリーン線数が175線であれば必要な解像度は350dpi、200線であれば400dpiといった具合です。単位も数値もまったく違うため注意しましょう。
印刷の仕上がりは、できるだけきめ細やかなほうが好まれるでしょう。しかしスクリーン印刷においては、状況によって適切に選ぶことが大切です。これは印刷方式の特性によるものでもありますが、求められる印刷のクオリティや仕上がりが異なるためでもあります。
スクリーン線数を適切に決めるためには、次のような2つの要件について検討が必要です。
印刷する対象物の材質
求められる印刷の細かさ
それぞれについて、詳しく見てみましょう。
どれだけきめ細かな印刷を求められたとしても、印刷する素材がそれをうまく表現できなければ意味がありません。
よくある印刷の対象物である「紙」について、種類ごとの特性の違いを考えてみましょう。紙にはさまざまな種類があり、それ自体に色がついているものや、きめが細かかったり粗かったりするものもあります。コピー用紙のようにきめ細かな紙であれば、確かに線数の高い印刷でもきちんと表現されるでしょう。
しかし新聞紙のようないわゆる「ザラ紙」は、インクを吸収してにじみやすいという特徴があります。線数を高くすると間が短すぎてインクがにじみ、印刷が「つぶれた」ようになって仕上がりが悪くなりがちです。このようなことがあるため、スクリーン印刷においては印刷する対象物の材質に合わせた線数を選ぶ必要があるといえます。
印刷によっては、求められる印刷の細かさがもとから低いものもあります。例えば、カタログでも一部分のスクリーン線数をわざと下げ、新聞の写真のような仕上がりにしてほしいということもあるのです。
また、印刷する元の素材の画質が低ければ、いくら高いスクリーン線数で印刷しても見栄えが上がることはありません。元画像の解像度を半分にした数値がスクリーン線数の目安です。それから極端に高くしても高い仕上がりにはならず、ファイルサイズだけが大きくなってしまうでしょう。
スクリーン線数は、求められる印刷の細かさによって決める必要があります。
スクリーン線数は一概に高いほうがよいとは限らず、材質や求められる細かさによって適切なものを選ぶ必要があります。ここではよりわかりやすく、具体的なスクリーン線数の使用例を3つ見てみましょう。
これらはどのような用紙に、どのくらいのスクリーン線数を用いるとよいかという例です。これからスクリーン線数を選ぶ際の指標として役立ててください。
新聞のようなざらざらした更紙は、インクを吸収してにじみやすいことから、スクリーン線数は低めの60〜80線程度が適しているといわれます。
しかし大手新聞社が採用しているのは、これより高い120〜200線(モノクロの場合)です。見た目で判断するとしたならば、新聞の中でも印刷が「より粗め」の線数と考えればよいでしょう。
スクリーン線数100〜150線は、およそ書籍や雑誌のような上質紙の印刷に向いています。新聞よりも印刷のクオリティが求められますが、コストを一定レベルに抑えることができる適切な線数です。印刷する対象がインクのにじみにくい上質紙であることも理由の1つといえます。
このくらいの線数になると、写真もかなり鮮明です。折れ線グラフや棒グラフもはっきり印刷できるため、おおむね読み物や資料に適した線数といえるでしょう。
カラー印刷でもカタログや写真集、画集といった高いクオリティの印刷が求められる場合は、150〜200線以上の線数がおすすめです。印刷の対象は表面がツルツルした光沢のあるコート紙で、一般的に広告やカタログ、チラシなどに用いられます。
コート紙は滑らかであるためインクがのりやすく、写真や色を再現するための高い線数による印刷が可能です。インクが乾きやすいという利点があり、ツヤがあるため見た目の印象もよいというメリットがあります。
印刷を注文するとき、線数はわからずサンプルとなる印刷物を示すという方法もありますが、実際に調べて線数を指定する方がより確実です。しかしそのためには線数を調べる方法と手順を知る必要があります。
そんなときは、専用の器具「スクリーン線数ゲージ」が役立ちます。ここではスクリーン線数ゲージで線数を調べる手順を解説します。
スクリーン線数ゲージという名称は聞き慣れないかもしれません。この機会に調べる方法を知り、今後の印刷注文に備えましょう。
印刷物の線数は、スクリーン線数ゲージを用いて調べることができます。スクリーン線数ゲージは透明なプレートで、細い線が左右異なる密度で放射状に引かれており、スクリーン線数を測定する専用の器具です。
細い線を切るように数値を示す軸が記されており、目の粗い方から70、80、90と増えていき、200までを示しています。これらの数値が表しているのが線数です。
線数を測定するには、まず印刷されている紙の上にスクリーン線数ゲージを乗せ、そのまま線数ゲージをゆっくりと回転させます。するとゲージに角が4つのひし形が浮かぶはずです。その中心を通る線数が、その印刷物の線数を表しています。
スクリーン線数ゲージは、あまり一般的な器具ではないようです。オフィス用品の中でも特にデザイン用品が豊富な店舗ならば見つけることができるでしょう。