「顧客は商品ではなく、体験を買いに来ている」の意味│顧客体験価値について紹介
現代は飽食の自体と言われ、よほどの事がない限り、飢えて死ぬようなことはありません。所得の無い人や就労が困難な人のためにも、生活保護というセーフティネットも存在しています。簡単にいえば「モノは足りている」時代なのです。特にここ数年は、シェアビジネスを始めとした「物質よりも体験」の流れが加速しています。この記事では、そういった「商品ではなく経験を買いに来ている顧客」という概念と事例を解説していきます。
現代は飽食の自体と言われ、よほどの事がない限り、飢えて死ぬようなことはありません。所得の無い人や就労が困難な人のためにも、生活保護というセーフティネットも存在しています。簡単にいえば「モノは足りている」時代なのです。特にここ数年は、シェアビジネスを始めとした「物質よりも体験」の流れが加速しています。この記事では、そういった「商品ではなく経験を買いに来ている顧客」という概念と事例を解説していきます。
ここ数年で一気に目にする機会が増えた「カスタマーエクスペリエンス」という言葉。直訳すると「顧客の経験」。これは、一言で表すと「商品の物質的な価値ではなく、その商品やサービスを利用した満足感や充実感の価値」を指します。カスタマーエクスペリエンスには5つの分類があり、 ①知覚価値(=五感などから得られる価値)、②感覚価値(=接客などの対人から得られる価値)、③創造価値(=知的好奇心を満たす価値)、④行動価値(=行動することによる価値)、⑤帰属意識(=企業やコミュニティに所属することにより得られる価値)に分けられます。これらはすべて「物質的な価値」ではありません。商品よりも、それを売っている定員との会話、お店の雰囲気、顧客自身がお店の商品開発に関われる機会など、そういった「目に見えない価値」のことを指します。これは、裏を返すと「顧客の商品やサービスを選ぶ判断基準が、商品自体よりも、体験などの付加価値に重きを置くようになってきている」といえます。現代では、技術の発展により物質的な差別化は難しくなってきたため、こうした「付加価値による差別化」が企業には求められているのです。
最近では、コンビニでも本格的なコーヒーが100円で飲めるようになりました。コストパフォーマンスだけで考えれば、スターバックスに行く人はかなりの損をしているといえるでしょう。それでも、彼らはスターバックスに通い続けています。この現象こそ、カスタマーエクスペリエンスの一つの事例です。もちろん、顧客はおいしいコーヒーを飲みたいと思っているのは間違いありません。しかし、スターバックスに通う人たちは、それ以上に「経験」に対してお金を払っているのです。店内のアットホームで落ち着いた雰囲気。親しみやすい接客。シンプルかつお洒落な備品。そういった「雰囲気の体験料も込み」であの値段のコーヒーなのです。CEOのハワード・シュルツも「スターバックスは、仕事と家庭の間にある第三の場所を目指す」と昔から言っています。これは、スターバックスという企業は「コーヒーだけを売る企業」ではなく「顧客に充実した体験を提供する企業」をということを明確にしているのです。
世界的に有名な高級ホテルのリッツカールトン。その飛び抜けた接客は多くのメディアで取り上げられています。最たる例が、何年か前に本にもなった「コーラが1000円で売られている」という事実です。普通の相場でいえば100円からそこらのコーラ。それを1000円で提供するとなると、下手をすれば、ぼったくり扱いされてもおかしくありません。にも関わらず、ホテルにはそういったクレームは寄せられないそうです。たしかに、そのホテルに宿泊できるのは、ある程度金銭面に余裕のある人間がほとんどだから、という要因もあるでしょう。ただ、本質はそこではありません。リッツカールトンで出てくるコーラは、そのタイミング、温度、シュチュエーション、すべてが完璧と言われています。そのため、顧客はその非日常な対応に感動を覚え、クレームを起こそうという気がまったく起きない、というわけです。これは、言い換えると「付加価値を高めれば、高額な商品でも顧客は対価を払う」といえるでしょう。原価でいえば全く変わりがない商品を、10倍以上の値段で売ってもクレームが出ない。これこそがカスタマーエクスペリエンスの力です。
モノを求める物質至上主義の時代は終わり、徐々に本格的な「体験にお金を払う」時代に差し掛かってきています。もはやこの流れを止めることはできないでしょう。技術の発達によって生活レベルは向上し、モノはすでに溢れているのです。実際、「これが無ければ死ぬ」といった状況の人はほとんどいいません。そんな中で、顧客にお金を出してもらうには、そのモノ自体で差別化しようとしてはいけません。商品よりも体験を、性能よりも満足度を高める意識が必要です。この記事ではスターバックスとリッツカールトンを紹介しましたが、世の中には素晴らしいユーザーエクスペリエンスを提供している企業が数多くあります。他社との差別化で悩んでいるのであれば、そういった事例やモデル企業を見つけ、ぜひ参考にしてみましょう。