1. パンフレット作成前に行うべき準備
パンフレット作成を始める前に、必ず押さえておきたい準備が3つあります。「基本の流れを決める」「フォントを選ぶ」「イメージカラーを決める」という3つのポイントです。何も決めずに作成を始めてしまうと、読みづらく統一感のないパンフレットになってしまう恐れがあります。
特に「基本の流れ」を決めておかないと、ページ構成やレイアウトが定まりません。それぞれの準備ポイントについて詳しく見ていきましょう。
1. 基本の流れを決める
パンフレットは通常、複数のページで構成されます。最初に、右開きか左開きかを決めましょう。日本語には縦書き・横書きがあり、縦書きの場合は右から左へ、横書きの場合は左から右へ読み進めます。そのため、縦書きは右開き、横書きは左開きが基本です。
どちらの向きでページを進めるかを最初に決めておくことで、後のレイアウト設計がスムーズになり、読みやすいパンフレットになります。
2. テキストのフォントを選ぶ
フォントはパンフレット全体の印象や読みやすさに大きく影響します。日本語でよく使われる「明朝体」と「ゴシック体」はそれぞれ特徴が異なります。明朝体は美しく繊細で上品な印象を与えるため、じっくり読んでもらいたい文章に向いています。一方、ゴシック体は文字の太さが均一で視認性が高く、見出しや強調したい箇所に適しています。
パンフレットの内容やターゲット層、伝えたいイメージに合わせて、バランスよく使い分けましょう。
3. イメージカラーを決める
パンフレットの色は、読者に与える印象や雰囲気を大きく左右します。「相手にどのようなイメージを持ってほしいか」を意識してイメージカラーを決めましょう。
たとえば、赤はやる気や食欲を増進させ、青は集中力や安心感、リラックス感を与えます。暖色系は飲食やサービス業向き、パステルカラーはやさしさや親しみやすさを伝えたいときに効果的です。企業やサービスにイメージカラーがあれば、それを軸に色を選ぶことで、ブランドイメージを強調できます。
2. 伝わるレイアウトの考え方
内容が充実していても、レイアウト次第でパンフレットの「伝わりやすさ」は大きく変わります。伝わるレイアウトのコツは、「情報のグループ化」「情報を揃える」「デザインルールを決める」「情報の優先度によるデザインの使い分け」「ストーリー性を持たせる」の5つです。それぞれを詳しく見ていきましょう。
情報をまとめてグループ化する
パンフレットに載せる情報は、関連性の高いものごとにグループ化し、まとめて掲載しましょう。たとえば見開き1ページに複数のトピックを掲載する場合は、それぞれグループごとに分けてブロック化します。
さらに各グループの間には適度な余白を設けることで、情報の切れ目が明確になり、視覚的にも分かりやすいレイアウトになります。余白はごちゃつき感を防ぐだけでなく、読者の視線を誘導し、全体として読みやすいパンフレットに仕上げる重要な要素です。
情報は揃える
情報を記載する際は、文字の大きさや色、配置を揃えることが大切です。たとえば同じ種類の見出しや本文には同じフォントやサイズを使い、色も統一感を持たせましょう。配置も揃えて整列させることでページ全体に一体感が生まれ、グループごとの情報の関係性も分かりやすくなります。
逆に文字サイズや色、配置がバラバラだと、どの情報がグループ化されているのか分かりづらく、読み手にストレスを与えます。情報が整理されていればいるほど、パンフレット全体が洗練され、おしゃれな印象にもなります。
デザインルールを決める
グループ化した情報ごとに、デザインルールを設定しましょう。たとえば同じ種類の情報には同じ色やフォント、共通アイコンなどを使い、一貫性を持たせます。これによって「ここからここまでは同じカテゴリの情報だ」と視覚的に伝わり、パンフレット全体の統一感が生まれます。
ただしすべての情報に同じデザインルールを適用すると、単調で面白みのないレイアウトになりがちです。グループごとに少し違いを出したり、アクセントカラーを効果的に使うことで、読み飽きない紙面を演出できます。
情報の優先度によってデザインを変える
パンフレットに載せる情報には優先順位があります。重要な情報や目立たせたいポイントは、文字のフォントや色、太さを大きく変えて強調しましょう。小さな違いしかつけていないと逆に読みづらくなるので、強調したい場合は明確な差を出すことがポイントです。
たとえば「最も伝えたいメッセージ」や「キャンペーン情報」などは太字や大きなフォント、目立つ色を使い、他の情報と差別化することで読者の注意を引きます。一方、本文や補足情報は落ち着いた色や細めのフォントで整理し、全体のバランスを大切にしましょう。
レイアウトにはストーリー性を
パンフレット全体の構成にはストーリー性を持たせることも大切です。たとえば見開きのワイドな紙面でサービスの流れや企業理念をビジュアル的に展開することで、ページをめくるごとに自然と読み進めたくなる流れが生まれます。読者の理解も深まり、印象にも残りやすいパンフレットになります。
3. かっこいいデザインにするためのさまざまな要素
「かっこいいデザイン」とは何でしょうか。デザインを「かっこいい」と感じるかどうかは人それぞれの感性によりますが、多くの人が「かっこいいね」と感じるデザインには共通点があります。
最大のポイントは、「商品・サービスやターゲット層にマッチしていること」です。たとえば、若者向けの腕時計のパンフレットなら、シャープさや精密さを表現したクールでアクティブなデザインが合います。同じ腕時計でもシニア向けブランドなら重厚さや落ち着き、高級感を感じさせるデザインが好まれます。子供服やベビー用品なら、明るい優しさや柔らかさ、安心感を与えるデザインが適しています。
このように、「どんな商品・サービスを、どのようなターゲット層に向けて訴求するのか」を明確にすることが、良いデザインへの第一歩です。
ターゲット層や商品の特徴を理解した上で、具体的にどんなスタイルで魅力やかっこよさを追求するかを考えましょう。パンフレットのスタイルや内容は、大判の写真集のようなものから、おもしろい記事を満載した雑誌風、携帯に便利なポケットサイズの小冊子までさまざま。どのようなスタイルで消費者に訴求するかによって体裁も変わります。
パンフレットの体裁は予算にもよりますが、ターゲットが明確になれば決めやすくなります。体裁が決まったら、掲載するコンテンツとともに、以下のデザイン要素を検討しましょう。
1 配色は同系色で絞り込む
色の使い方はデザイン初心者にとって難しいポイントです。目立たせたい部分に強い色を多用しすぎると全体が“うるさい”印象になり、バランスを崩すことも。これを避けるためには、同系色を使って色数を絞り込むとよいでしょう。
たとえば黒やシルバーでまとめればシャープでクールな印象に、赤や黄色は明るく活発なイメージに、パステルカラーなら柔らかく優しいイメージになります。まず商品やサービスのイメージに合った基本色を選び、その同系色を使い分ければパンフレット全体にまとまりが生まれます。
強調したい部分だけに強めの色を使うことで、締まりのあるかっこいい配色となります。また、企業やサービスのシンボルカラーやロゴカラーを活用すると統一感が増し、ブランドイメージも高められます。
インターネット上にはカラーパレットのサービスも多く、色の組み合わせに悩んだときはぜひ活用しましょう。
2 写真は枚数や使い方を工夫する
写真は人の目を惹きつける強力な要素ですが、使い方によっては逆効果にもなりかねません。ピンボケや手ぶれの写真は避け、パンフレットの目的に合った写真を使うことが大前提です。
商品やサービスを象徴するインパクトの強い写真は1枚を大きく扱うと効果的です。誌面を上下で分け、上段に写真とキャッチコピー、下段に説明文を配置するなどのレイアウトで全体がすっきりまとまります。
写真点数が多すぎると読者の目移りを招き散漫な印象になりやすいので、メインの1枚を大きく、それ以外は補足的に小さく配置すると整理された印象に。逆に、商品の多様性やバリエーションをアピールしたい場合は、小さな写真を並べて活気や楽しさを演出するのも有効です。
また、真面目で堅い内容には写真よりもイラストやマンガを加えることで、親しみやすさややわらかさが生まれます。
3 イメージに合ったフォントを選ぶ
配色や写真だけでなく、フォント(書体)選びにもこだわりましょう。フォントひとつで誌面の印象が大きく変わります。
キャッチコピーやリード文など目立たせたい部分には太めのフォントを、本文や説明文には読みやすい細めのフォントを選ぶのが一般的です。同じ誌面内でフォントを多用しすぎると統一感がなくなるため、ゴシック体や明朝体など基本の書体を決め、見出しと本文で太さを変えるなどの工夫をするとよいでしょう。
「ファンシー書体」など個性的なフォントは、内容やターゲットに合うか、読みやすいかをよく確認して使いましょう。
4 大小・色味のメリハリをつける
ビジュアルの大小や色味のメリハリは、かっこいいデザインには欠かせないポイントです。写真・イラスト・フォントに変化がないとのっぺりとした誌面になり、読者の興味を引けません。
カタログ風パンフレットならグリッド構成や表組みも有効ですが、そうでない場合は「最もアピールしたいもの」に大きくスペースを割き、他はサブ的に扱うなど、誌面全体にメリハリを持たせましょう。
配色でも、強調色を多用しすぎず、「ここぞ」という場面に絞ることで、全体が引き締まります。
5 余白を効果的に使う
デザインに不慣れなうちは、誌面全体に要素を詰め込みがちですが、余白(スペース)の使い方が洗練されたデザインを生み出します。
余白がないと窮屈な印象になり、行間が狭すぎると読みにくさも増します。逆に余白をしっかりとることで、読者の視線を誘導しやすくなり、各要素のバランスも自然に整います。余白を「もったいない」と感じることもあるかもしれませんが、上手く使いこなすことで見栄えの良いパンフレットに仕上がります。
4. 写真やイラストの活用方法
文章だけで情報を伝えようとすると、どうしても情報過多になり読みにくくなります。写真やイラストを組み合わせることで、直感的に内容を伝えられ、パンフレット全体の印象も華やかになります。アイキャッチとして大きく配置したり、説明文の補助に使うのも効果的です。目的や内容に合わせて写真・イラスト・マンガなどを使い分けましょう。
5. テンプレートで効率よく仕上げる
「プロに頼むほどではないけれどデザインに自信がない…」という場合は、無料テンプレートやオンラインのデザインサービスを活用するのもおすすめです。たとえばラクスルなどのサービスには、会社案内や商品カタログなど用途別テンプレートが豊富に揃っています。自分で写真やテキストを当てはめるだけで、手軽に高品質なパンフレットが作れます。
6. 校正と最終チェック
パンフレットが完成したら、校正チェックを念入りに行いましょう。全体のレイアウトや色味、伝えたい内容が漏れなく盛り込まれているかをまず確認します。次に、漢字やスペル、価格・商品名などの表記ミス、誤字脱字を細かくチェックしましょう。音読や複数人でのダブルチェックも有効です。印刷後は修正できないため、校正は念入りに行いましょう。
7. まとめ
パンフレットは、ターゲットや目的に合わせた内容・デザイン・レイアウトによって、その「伝わり方」が大きく変わります。どんなに情報が優れていても、見た目や構成、ストーリー性がなければ手に取ってもらえません。
ターゲット層や訴求したいイメージに合わせてスタイルや色・フォントを選び、情報のグループ化や余白の使い方、写真やイラストの活用など、デザインの基本を意識することで「思わず手に取りたくなる」パンフレットを目指しましょう。
プロの制作会社に外注するのも選択肢ですが、無料テンプレートやオンラインデザインツールを上手に使えば、コストを抑えつつスピーディーにクオリティの高いパンフレットを作ることも可能です。予算や納期、仕上げたいイメージに応じて最適な方法を選び、自信を持って届けられるパンフレット作成に取り組んでください。