ビジネスに使える色彩心理学

色彩には、人の感情を高ぶらせたり、安らぎを与えたりと、色ごとに特有の心理的な作用があります。この記事では、ビジネスシーンで色の持つ作用を、効果的に活用するためのヒントをご紹介します。

色彩には、人の感情を高ぶらせたり、安らぎを与えたりと、色ごとに特有の心理的な作用があります。この記事では、ビジネスシーンで色の持つ作用を、効果的に活用するためのヒントをご紹介します。

赤は暖色系の代表であり、人の目につきやすく、インパクトが強い色です。気分を高揚させ、食欲を刺激するとともに、活力やエネルギー、リーダーシップを表します。また、見る人に明るい雰囲気を抱かせ、元気と回復力を与えてくれます。
赤はファーストフードやレストランのロゴによく使われるほか、企業のロゴでも好んで採用されます。購買色とも言われ、バーゲンや値札に赤が使われるのは、視覚的な訴求力と、飲食関係の場合は食欲増進効果も期待できるためです。
ビジネスの場面で、赤は「ここぞ」と思うところに使うことで威力を発揮します。提案資料で注目してほしい箇所に赤を使うと、視線が自然とその箇所に集まります。プレゼンテーションで赤い服や小物を身につけていると、観客の注目を集めやすいのと同時に、自分自身も前向きな気持ちでプレゼンに臨みやすくなります。
一方で、赤色には注意すべきネガティブな側面もあります。 赤は信号や標識など、停止・警告・危険を意味する色でもあります。多用すると威圧感や不快感を与えたり、過剰な警戒心を抱かせたりする可能性があります。
また、赤は非常に強い色なので、背景色や広範囲にわたって使用すると、視覚的な疲労を招きやすいです。赤は、強調したい箇所に限定して使用し、その分量を意識することが、ビジネスで効果的に赤色を使うための実践的なポイントと言えるでしょう。

青は寒色の代表であり、誠実さ・信頼・知性・冷静さ、そして、すがすがしい空や海をイメージさせる、好感のもてる色です。気持ちを沈静させ、集中力を高める効果があります。
青は日本では最も人気のある色で、クリーンなイメージを重視する政治家や、信頼感を打ち出したい老舗銀行などの企業がコーポレートカラーに採用する傾向があります。
ビジネスの場面で、青は仕事を効率的に行いたいとき、信頼を勝ち取りたい時に効果的な色といえます。青い空間は体温が下がり、落ち着いた気分になると言われているため、頭を使う場であるオフィスには適した色と言えます。また、濃紺のスーツは信頼を勝ち取る色として人気が高く、コミュニケーションを円滑にする色とも言われています。
一方で、青色は冷たいイメージがデメリットになることもあります。 室内を濃い青で染め上げてしまうと、心理的な冷たさや暗さが影響して、士気に関わったり、また、食欲をなくす場合があります。薄い青の空間で蛍光灯を使うと、顔色が不健康に見えることがあります。青色の面積を多くしすぎない、一部の照明はオレンジ系にするなどで調整しましょう。

白は、純白のウェディングドレス、真っ白な雪景色のように、何色にも染まらない美しさを持ち、清潔感や潔白、そして神聖さがイメージされる色です。どんな色とも相性がよく、配色を明るくクリアに見せることができます。
ビジネスの場面では、白は清潔で若々しいイメージをアピールしたい時、フォーマル感を演出したい時、今までのイメージを一新したい時に効果的な色といえます。スーツに合わせられることの多い白いカッターシャツは、清潔感や誠実さといった好印象を演出できるアイテムと言えるでしょう。
中立的な立場で多くの人と接する必要がある場合にも、白は効果的です。医師や検査技師、看護師といった職業の人が白を身につけることが多いのは、清潔さを感じさせるだけでなく、中立的で公平な立場をアピールするためでもあります。
また、白は膨張色で、空間に広がりをもたらす効果も持っています。壁紙などの広い面積に白を使うことで、部屋をより広く感じさせ、閉塞感を軽減するのに役立ちます。オフィスでも白を多用すれば、実際の広さ以上に開放的で明るい空間をつくることができるでしょう。
一方で、白は冷たさや無機質さといったデメリットになる側面も持っています。白一色で構成された空間は、殺風景で孤独感を感じさせたり、個性がなく味気ない印象を与えたりする可能性があります。ビジネスシーンで広範囲に白を用いる場合は、木目や暖色系の照明などを加えて、冷たくなりすぎないように調整しましょう。また、白は汚れが目立つため、常に清潔に保つメンテナンスも不可欠です。

グレーは、知的で洗練された都会的な印象で、落ち着きや大人っぽさを演出できるとともに、静かで落ち着いた気持ちにもしてくれます。
ビジネスの場面で、グレーは思考力を高め、作業に集中したい時に効果的な色といえます。青や紫などと同じ「寒色系」に属するグレーは、感情の起伏を抑え、黙々と目の前の仕事をこなすという点で、仕事の能率を上げることに効果があるからです。
また、グレーは黒と白の中間色でニュートラルカラー(無彩色)のため、相手を立てたい時や相手を際立たせたい時にも有効で、自己の個性を抑えて他の色を目立たせることができます。
仕事で疲れきって何も考えたくない時や、ちょっとした刺激さえうるさく感じるような時、一人静かにグレーを見つめると、それまでの刺激が和らぐでしょう。
一方で、グレーには、独創性や行動力を抑えてしまうというデメリットもあります。グレー一辺倒の服装はニュートラルな印象のため自己アピールが必要な場面には向きませんし、また、過度にグレーの面積が多いオフィスは、陰鬱や優柔不断な印象を与え、創造的なアイデアの創出を妨げる可能性があります。意欲の減退や寂しさにつながることもあります。ビジネス面でグレーを使う際は、白や明るい色、または情熱的な色(赤など)を差し色として取り入れてバランスを取ることが重要です。

黒は、重厚さ、力強さ、断固とした意志など、他の色と違った強い個性を持ちます。同時に、高級感や気品、神秘性も漂わせる色です。それでいて、他の色との相性が非常に良く、配色に黒が入ると全体が引き締まり、ダイナミックな印象を与えます。
ビジネスの場面で、黒は自分の役割や威厳をアピールしたい時に適している色といえます。特に「ここは絶対に譲れない」という重要な交渉の時や、リーダーシップを示す場で、黒を基調としたファッションやスタイルで臨むと、相手に対して権威や威厳を示せます。また、洗練された印象や品質の高さを印象付けたい企業は、コーポレートカラーに黒を採用すると効果的です。
オフィスにおいては、例えば会議室や応接室に黒いソファーやテーブルを置くと、重厚感やグレード感のある空間を演出できます。また、黒は収縮色であるため、他の色と組み合わせることで、配色全体を引き締めたり、特定の箇所を細く見せたりする効果も持っています。
一方で、黒は拒絶、不安、暗黒といったネガティブな側面も強く持っています。オフィスにおいては、大きな面積で黒を使い過ぎると、圧迫感が高まり、心理的にも閉鎖感や孤独感を強く感じる可能性があります。また、ファッションにおいては黒一色で固めすぎると、近寄りがたい、威圧的な印象を与え、コミュニケーションを阻害することもあります。ビジネスで黒を使う際は、黒の面積が多くなりすぎないようにすることで、洗練された印象を演出しつつも、圧迫感や威圧感が高まりすぎないよう調整することが重要です。